調停にはカウンセリング技術が必要です

 調停者には、当事者の思いを共に探していくことが求められます。言い換えるとカウンセリング技術が必要です。当事者は自分自身の思いがわからないことがあるからです。

 先日学習会で、調停のロールプレイをしました。実際は4日間に及ぶ内容を、エッセンスのみ2時間に凝集した内容でした。

 大学生のAさんとBさんが、イベントに参加して得た収益の分配をめぐって対立しています。Aさんはグループの代表で、今後の活動のために収益をグループで管理していきたいと考えています。Bさんはグループの中心メンバーの一人で、収益は参加者で配分すべきと考えています。

 参加者はペアになって、Aさん役かBさん役かに分かれました。Aさん役にはAさんの、Bさん役にはBさんの思いを書いたプリントを配られました。それぞれのプリントをお互いに見せあわないように言われました。私はBさん役を担当しました。

 まずAさん役とBさん役の2人で10分間交渉をしました。お互いの主張を繰り返すだけで、合意に至ることができませんでした。

 次にAさん役とBさん役に加えて、仲裁人のCさんの3人で20分間話し合いをしました。不思議なことに次第に両者の共通点を認識することができ、なんとなく折り合うことができました。(後で確認すると、私は相手に譲歩しすぎていたことがわかりました。)

 参加者は調停の効果を実感することができました。


 学習会が終わってから、ある女性から声をかけられました。先日 "THE RED PILL 上映会" で、上映会後の交流会まで残ってくれた人でした。

 「細川さんは家族の問題を調停まで持ち込んではダメと話していましたが、調停に持ち込まないと解決できないでしょう。」

 私は反論をしたかったのですが、反論をする前にお開きになってしまいました。

 なぜ調停がうまくいかないか、そしてなぜ私が譲歩しすぎてしまったのか、考察してみます。

 Aさん役にはAさんの、Bさん役にはBさんの思いを書いたプリントを配られました。そのプリントには、第1段落から第8段落まで書かれていました。前半部分は収益分配についての考えや、今回のイベント運営に対する思いが書かれていました。段落を追うにしたがって、グループの運営手法やグループの将来に対する思い、相手に対する思いが書かれていました。言い換えると、前半の段落にはイベントに対する表面的な思い、後半にはより内面的な思いが書かれていました。

 2人で交渉すると、第1段落から第3か第4段落までの思いー浅い階層の思いーで言い争いになってしまい、合意に至ることができませんでした。調停ロールプレイでは、第7第8段落までの思いー深い階層の思いーを話すことができ、その過程でお互いの合意点をみつけることができました。

 しかしながら、実際に調停を3年間も行った当事者の立場から言うと、そんなに上手に話し合うことができないと思います。特に調停の初期段階では、当事者はせいぜい第1から第3段落くらいまでしか気が付いていません。浅い階層の思いにフォーカスして解決策を見つけようとすると、当事者が納得できる解決に至りません。

 今思うと私は元妻と浅い階層の思いでしか話をすることができませんでした。その結果子育てをめぐって長期間に及ぶ裁判所係争をすることになり、裁判所係争が終結した今でもお互いに居心地の悪い思いを抱えています。

 第4から第8段落ー深い階層の思いーは、当事者の中にあるはずですが、当事者自身も気が付いていません。深い階層の思いは調停員が当事者と一緒になって探して行かなくてはいけないのです。その作業を私はカウンセリングと呼びます。当事者双方が深い階層の思いを発見し、それを分かち合って初めて、当事者双方が納得できる解決ができます。

 最後に私が譲歩してしまった理由を考えます。

 私は知り合ってあまり日が経たない人にもかなり深い部分まで自己開示をしてしまい、驚かれることがあります。自宅に帰り私はAさん役に配られたプリントを読みました。私は「Aさんはこんな気持ちだったのか。」と驚きました。私は自分の思いをすべて開示したつもりでいたのに、Aさん役は私(Bさん役)に開示していない思いが書かれていました。おそらく私はAさん役よりも先に自己開示してしまい、その結果Aさんよりも先に満足してしまったのでしょう。Aさん役よりも先に満足してしまったから、Aさんの立場に歩み寄ろうかなという気になったようです。

 なぜ私が自己開示するようになったか。それは私がカウンセリングの勉強をしたからです。カウンセリングはクライアントの内なる声ー深い階層の思いーに耳を傾ける訓練をすることになりますが、おのずと自分自身の内なる声ー深い階層の思いーにも向き合うことになります。またグループワーク等を通じて、自分の思いを発表しあうこともあります。それは職場や学校では行わないほど高いレベルの自己開示をしあいます。

 カウンセリングの勉強をすることで自分らしく生きることができるようになりましたが、交渉に弱くなるようです。

Coそだて株式会社

私たちはカウンセリングなどを通じて、家族の心理的サポートを行っています。 〒420-8026 静岡市駿河区稲川1丁目4−19エスプラネードINAGAWA103号 tel: 090-3432-1888 e-mali: cosodate0820@gmail.com

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