医療面接にカウンセリング技法が役立った
私は高齢者施設を中心とした訪問診療の仕事をしています。本日は別のクリニックで訪問診療を受けていたのにもかかわらず、当院からの訪問診療に切り替えるケースがありました。わざわざ担当医を変更すると言うことは、何か前医の対応に不満があったのか、それとも患者さんないし家族が医療従事者とトラブルをかかえやすいタイプの方なのでしょう。私は少しだけ身構えました。
施設の看護師に前もって事情を聞きました。患者さんのご家族が、前医とのコミュニケーションに不満を持っていたそうです。
患者さんの診察を終了した後、ご家族のお話をお聞きしました。ご家族(娘さん)は今後のことが心配だと話し始めました。娘さんは数年前に患者さん(お父さん)が認知症になってからの病歴を話し始めました。私は娘さんの心配事の中身を確認したくて、質問しました。
「娘さんは、変わっていくお父さんに向き合って、どのような思いを抱えていたのですか?」
娘さんはとてもびっくりした表情をした後、堰を切ったように話し始めました。
お兄さんとの関係、すでにご逝去されたお母さんとの関係、夫との関係、父親(患者さん)とは母親との関係、そして自分(娘さん)と父親との関係。具体的には、父親の問題に他に頼る人がいないから頑張ってきたが、父親が自分に依存して疲れ切ってしまったこと。それでも健康問題を抱えて父親に手を尽くしてあげたいこと。
私は娘さんばかりが頑張る必要はないから、我々や施設スタッフをもっと頼ってほしいと伝え、契約については看護師に任せてその場を後にしました。
前医はあまり娘さんのお話を聞くタイプではなかったと、施設の看護師から聞きました。
娘さんは、家族の問題を誰にも相談できずに、自分だけで抱え込んでいました。20分足らずの面談でしたが、娘さんを勇気付けることができたようです。
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